発話中の皮膚振動計測

国際誌に論文掲載 (2015/11)

論文を投稿してはリジェクトされ,国際会議で発表すればそんなことあるわけないと笑われる,と散々だった歌唱時の前額皮膚振動のレーザードップラ振動計による計測の研究がようやく論文誌に掲載されました.詰めの甘かった部分を査読者にとことんコメントしていただき,それに対応することによって,しっかりした内容になりました.


音楽音響研究会にて発表 (2014/7)

ソプラノ歌手の歌唱時の皮膚振動計測の結果を7月26日開催の音楽音響研究会にて発表しました.事前に提出した予稿には誤りがありますので,スライドを参照してください.なかなかきれいな結果が出ないので,この方向の実験はこれで一段落つけるつもりです.


計測の再現性 (2014/4)

椅子に座って額を固定した状態で歌手の皮膚振動計測を行い,その計測の再現性を調査した結果をまとめた論文が「音声言語医学」に掲載されました.


歌唱時の皮膚振動計測 (2014/4)

いわゆる裏声は「頭声」といい,歌うとき,そしてそれを聴くときに歌声が頭に響くとされています.頭に響くということは,頭が振動しているのではないか?ということで,なんとプロのソプラノ歌手3名にご協力いただき,歌唱時の額の振動を計測しました.結果はいずれご報告しますが,今のところ「人それぞれ」という結果になりそうです.

実験に参加してくださった方のお一人がブログに写真を載せてくださっていますが,その名前をここには載せられないので興味のある方は探してみてください.

2014年6月6日追記:この測定の結果を7月の音楽音響研究会にて発表することになりました.筑波大学での開催です.


腹話術発話時の皮膚振動計測 (2013/9)

腹話術に革命を起こした「いっこく堂」さん.そのときの皮膚振動を測る幸運に恵まれました.計測の結果,腹話術で話しているときには,鼻周辺の振動が大きくなることがわかりました.これは鼻から音が出ていることを意味しています.口が開いていないのですから音は鼻から出るしかないわけですが,それを確認できた意義は大きいです.

しかし,そうだとするとわからないことがあります.鼻から声が出ていれば,いわゆる鼻声っぽい(細かく言うと「開鼻性」をもつ)声になるはずですが,いっこく堂さんの腹話術は鼻声っぽくありません.その点をご本人にうかがったところ,「鼻声にならないようにしています」とのお返事でした.音声科学的には考えにくいことですが,何か秘密のテクニックがあるのでしょう.

計測の様子や結果は以下のテレビ番組で放送されました.


チューブ法による訓練の効果 (2013/6)

言語聴覚士(speech therapist)が用いる訓練の1つにチューブ発声法というものがあります.言語聴覚士の指導の下,チューブ(ストロー)を吹く練習をします.これは,声道の形態を変えたり,唇の周辺の振動感覚を意識したりする,発声訓練法の1つだそうです.

一般の学生を対象にしてこのチューブ法で訓練を行うと顔面の皮膚振動にどのような変化が現れるのかをレーザードップラ振動計を用いて調査しました.県立広島大学との共同研究です.

研究の過程でいくつかMatlabプログラムを作りました.ほとんど需要はなさそうですが,LGPLで公開します.

本件に関しては以下の通り発表を行いました.


歌唱中の顔表面の振動 (2012/9)

声楽家の世界では,歌唱中の身体感覚を「声をあてて」,「頭蓋骨を広げて」などの独特な表現を用いて表されることがあるそうです. このような表現で歌唱しているとき,声楽家の身体はどのように振動しているのでしょう? この研究ではスキャニング型レーザードップラ振動計という装置を使って,声楽家の歌唱中の顔の振動を測定しました.

測定の様子の写真をご覧にいれます. 頭を固定するため,背もたれから2本の棒が突き出ている特殊な椅子を作りました. さらに,首は手術用のネックピローで固定しています. また,レーザーから目を守るため,ゴーグルをかけてもらっています.

setup

次に,2つの声の高さで母音「い」を歌唱(裏声)した際の測定結果を示します. 赤に近いほど振動が大きく,青に近いほど振動が小さいことを表しています.

i(normal) i(high)
(左)A4 (440 Hz),(右)F5 (698.5 Hz)にて歌唱した際の振動速度パターン

この声楽家によると,「高い声はあてて出す必要がある」のだそうです. また,「高い声は突き抜けるイメージ」だそうです. 右の図では,額の振動速度が増加して,鼻周辺の振動速度は減少しています. このようなことが「あてる」という技術や「突き抜ける」イメージに対応している可能性があります.

詳しく知りたい方は以下の論文をご覧ください.


発話中の顔表面の振動 (2012/3)

音声は口や鼻孔(鼻の穴)からだけでなく,顔や首の皮膚を通しても体の外へ出て行きます(放射されるといいます). そのとき皮膚は振動しています. この振動の様子を計測することができれば,発話や歌唱の仕組みをより深く理解することができます. また,発話に障がいのある患者さんの訓練に利用したり声楽の練習にも利用できるでしょう.

この研究ではスキャニング型レーザードップラ振動計という装置を使って,発話中の顔の振動を測定しました. これまでに,顔に加速度センサーを貼り付けてこのような測定が行われたことがありますが,そのような方法ではセンサーが振動に影響することが避けられません. 今回利用した装置は,対象の振動を非接触で測定することができたり,周波数ごとの振動の様子を測定したりすることができます.

測定の様子の写真をご覧にいれます. 頭を固定するため,話者には横になってもらいます. そして,その顔の上に測定装置を固定します.

setup

次に,母音「あ」と鼻音「ん」を発話した際の測定結果を示します. 赤に近いほど振動が大きく,青に近いほど振動が小さいことを表しています.

a N
(左)母音「あ」,(右)鼻音「ん」発話時の振動速度パターン

母音「あ」では口の周りも振動していること,鼻音「ん」では鼻や額も振動していることがわかります. 私たちの頭には副鼻腔という空洞があります (このページの図が参考になります). 鼻音の場合,この空洞を通して音が伝わり,額からも音が放射されていることがわかります.

詳しく知りたい方は以下の論文をご覧ください.

この研究は科学研究費補助金および兵庫県科学技術振興助成金の支援により行われています.


Last updated on Nov. 30 2015.
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