声道模型の作り方

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母音「あ」の声道模型。(左)側面、(右)正面。

■ 概要

声道模型は次のような手順で作られます。

  1. MRI撮像
  2. 歯列撮像
  3. 歯列補填
  4. 声道領域抽出
  5. STLファイル作成
  6. 光造形
これら全ての手順に私たちが蓄積してきたノウハウが活かされています。 (関連文献: Fujita and Honda, 2005)


■ 1. MRI撮像

まずは核磁気共鳴画像法(MRI)で発声状態を3次元で撮像します。

模型のモデルになる人は誰でもよいというわけではありません。発声が安定して いること、寝た状態になっても声質が極端に変わらないことなどが求められます。 (関連文献: Kitamura et al., 2005)

MRIデータの画質を良くするために、同期撮像という手法を用います。これはス トロボ撮影(ミルククラウンの連続写真などが有名)の原理を使って、発声してい る時だけ撮像するものです。これによって、呼吸による画像の乱れを避けること ができます。(関連文献: Masaki et al., 1999) この他にもさまざまなノウハウ が活かされています。

得られた画像にノイズがないか、声道の形が標準的なものかををチェックして、 よいデータであれば次に進みます。

MRI scanner
ATR-P脳活動イメージングセンタ のMRI装置

■ 2. 歯列撮像

X線と違って、MRIでは骨が映りません。ですから歯も映りません。しかし、発声 にとって歯はとても重要です。そこで、私たちは次のような方法で歯を撮像して、 発声中の画像に「入れ歯」をします。

MRIでは鉄分を含むものが明るくはっきりと映ります。そこで、モデルになる人 にブルーベリーのゼリー飲料を口にふくんでもらって撮像します。こうすれば、 歯の形がわかります。書くと簡単ですが、モデルさんにとってたいへんな苦労を 伴う撮像です。ほとんどの方が「二度とやりたくない」とおっしゃいます。

teeth
ブルーベリーのゼリー飲料を口にふくんで撮像した画像。 左が前。ゼリー飲料が白く(高輝度に)映り、歯の輪郭がはっきりわかる。

■ 3. 歯列補填

得られた画像から歯を抽出します。手作業でていねいに切り出します。そして、 発声中の画像に歯の画像を埋め込みます。この技術にも細かいノウハウがありま す。(関連文献: Takemoto et al., 2004)


■ 4. 声道領域抽出

歯を埋め込んだ画像から声道の領域(空気部分)を抽出します。おおまかな部分は 画像処理技術による自動処理で抽出しますが、細かい部分は手作業で1点ずつ修 正していきます。数日を要する作業ですが、この作業が声道模型の「声」を決め ることになるので、細心の注意を払って根気よくおこないます。


■ 5. STLファイル作成

声道領域の3次元データから、光造形用のSTLファイルを作成します。これは立体 形状の表面に3角形をしきつめたようなデータです。私たちはMaterialise社の MimicsとMagicsというソフトを使っています。

まずは声道の立体形状を作ります。

vocal tract
母音「あ」の声道立体形状。左が前。 唇部分に箱状のものがついている。

次に、声道の立体形状に対して壁をつけます。余分なところをていねいに削って ようやく声道模型のSTLデータができます。

solid model
声道模型。左が前。上の声道領域に3mmの壁をつけたもの。

■ 6. 光造形

STLファイルを光造形の業者さんに渡して造形していただきます。完成を待つ間 は、いい「声」が出るよう祈る日々です。


■ おわりに

私たちはこの声道模型を使って、人間の発声メカニズムや、音声中の話者の特徴 が生み出される要因について研究しています。また、デモとして、数体の声道模 型を使って合唱させたりしています。その映像がYouTubeでも公開されていま す。 こちら こちら


■ 関連文献



Last updated on Feb. 4 2010.
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